【コラム】現代に甦る若木竹丸 怪力法トレーニング

若木竹丸先生の名著『怪力法』の序文には、以下のような我々トレーニーに身にしみる格言の数々が述べられている。

日く――、「成(な)し能(あた)ふ法だけ、行へ」

「世界は今正に軆育(たいいく)に血眼(ちまなこ)なり」

「勝負に拘泥せざる所の自己肉軆鍛錬こそ我等が天より輿(あた)へられたる所の貴き義務では無からうか」

「見よこの肉鎧を、努力の影には人知れぬ涙あり」

「諸君は須らく余の運動法に絶対の信頼を置け。信ずるは即ち力なり」。

さて、現代によみがえる『怪力法』を、ひきこもりトレーニー山田崇太郎がひも解く、のだ。

 

 

さて、今回は日本における筋カトレーニングの祖、

超怪力・若木竹丸先生の著書『怪力法』のトレーニングを紹介します。

題名のまんま「できるかな?」的な種目もありますので、ぜひ奮ってやってみてください。

『空手バカー代』を高3まで全部実話だと思っていた私。どうやったらこんなに強くなれるんだと

大山総裁の著書を読みあさり、学校に巻き藁(わら)持参で拳を鍛えたり、

授業中に指立て伏せをしたりする日女を過ごしていました。

著書の中に「10円硬貨曲げ」や「指立て伏せ」などの鍛錬方法を、若木先生の『怪力法』にならったという

記述がありました。『怪力法』といういかついキャッチは、私のハートをがっちりつかみました。

そして復刻された本をやっと手に入れ心酔し、今ではバイブルとなっています。

若木先生はユージン・サンドウの『体力養成法』に出会い、「生けるヘラクレス。男子理想肉體美」

と衝撃を受け、その日から毎日毎日12~15時間トレーニングをしていたそう。

素敵すぎます。くじけそうになったときは「おいっ!今世界中のどこかで、お前と同じようなトレーニング

をやっているかもしれない。それでいいのか!」と気合を入れなおしたそう。

この逸話だけでトレ3時間おかわりできてしまいます。

晩年は脳梗塞で半身が麻痺してからも「上腕を40センチ以下にはしたくない」とトレーニングを続けたそうです。

もう何から何まで尊敬してやまない若木先生!

さー、初めませう。少なくとも30分以上、努力しませう。そして一年間は継続しなければなりません。

 

 

 

怪力法について

 

『怪力法並に肉体改造体力増進法』は1938年、若木竹丸が27歳の時に出版されており、

世界各国の力技師(ボディビルダー、レスリング、柔道など)の紹介から筋肉解剖図、

栄養学、健康維持運動、ウエイトトレーニング、そして若木の独創したトレーニングが多数掲載されています。

戦中戦後の物のない時代にも、やる気があれば誰もが行える肉体鍛錬をめざし、「時を選ばず。場所を選ばず。

道具も選ばず。道具を必要とするも廃物を利用でき得るもの。安価で購買でき得るもの。変化ありて興味深きもの。

余り長時間にいたらぬもの」として、チューブを使った「若木式自動車チューブ運動法」、

椅子を使った「椅子式運動法」、パートナーと鍛えられる「一挙二人に体育法」、

そして一人で行える「個人徒手体育法」を載せています。

 

 

 

椅子式運動法第4法

(ディップス)

 

次ページから紹介するディップスは、怪力法では「椅子式運動法第4法」とされています。

一定の高さのある平行な二本の棒か、背もたれのある椅子が二脚あれば行えるため、

ジムに行かずとも職場や自宅で行える簡便性も魅カの1つです。

ディップスは上半身のスクワットと言われ、上半身の大半の筋肉が運動に参加します。

自身の体重のほとんどが負荷としてかかるとてもハードな種目です。

一部の種目では肩や腰に負担が大きかったりしますが、ディップスは安全です。

唯一、肩鎖関節への負担が懸念されるので、負担を減らすため、肩甲骨を下げたフォームをしっかり習得しましょう。

前述の通り、使われる筋肉が大きいので発揮される筋力も大きく、かつ故障しにくいので加重が容易です。

そのため、単関節運動より効率よく、土台作り、筋力強化、筋肥大に役立ちます。

ディップスで使われる筋肉は、肘関節伸展で上腕三頭筋、肩関節屈曲で三角筋前部、上腕の内施で大胸筋が使われます。

あまり知られていませんし、動作中に意識もしていないと思いますが、腕を下方に引く、

そして肩甲帯をおさえる広背筋、肩甲骨を下げる僧帽筋下部、肩甲骨の下方回転、胸を張る前鋸筋も鍛えられます。

大胸筋下部(肩の柔軟性がある人は、PNFでいうストレッチ、ミッドレンジ、コントラクションの全てが網羅できているので、

下部に関しては完璧に近い)と三頭筋(三頭筋の力発揮に適した体勢であり、ストレッチもかけられ、完全収縮もできて効果が高い。

三頭筋は二関節筋なので一種目全てで全部OKということはない)の発達に有効なため、

分割してトレーニングを行っているなら胸、または三頭の日に入れるとよいでしょう。

スポーツ選手向けのテクニックとして、体の連動性を高めるために足の蹴り(地面を蹴るわけではなく、

足をばたばたさせる)を使い運動の補助をします。

ディップスという運動を〝効かせる〟ではなく、効率よくスポーツ的なひとつの目的としてチーティングを多用し行う方法です。

 

 

 

 

 

 

「できるかな?」編

 

 

椅子式運動法第4法(ディップス)

 

「著者は多年の熟練により、此(こ)の運動法を容易に六、七百回為しえる」

 

 

基礎編

 

 

動作解説

バーの間隔を肩幅か、それより広い程度で肩関節に違和感のない範囲で調節する。

ニュートラルグリップ(パラレルグリップ、回内も回外もしていない状態)でバーをつかみ、

足の力を使い両腕を伸ばした姿勢をとる。このとき体は垂直になっており、目線は正面かやや下を見る。

体をゆっくりと降ろす。この際、受動的な肘関節屈曲と肩関節伸展が起こる(ネガティブな負荷がかかる)。

両肘は真後ろを向いている。

体を下げる際、できるだけ下げるが、柔軟性は個人差があり故障につながるので無理のない範囲で下ろす。

ここがボトムで、ここから肘関節伸展と肩関節屈曲を行うことによって身体をゆっくりと上げる。

最初の姿勢に戻るまで押し挙げる。

 

 

注意点

肩甲骨を下げた状態で行う。それによって肩関節への負担が減る。肩関節に負担がかかるのでストレッチさせすぎない。

動作中は筋肉の緊張を解かない。

呼吸は基本的に下ろすときに吸い、上げるときに吐く。が、高重量のときは息を止め動作を行う。

できるだけノンブレスで行い、限界がきたら呼吸をし、また反復する。この呼吸方法は健康的被害の可能性があるので注意。

 

 

 

 

応用編

 

大胸筋へのアプローチを考えたディップス

 

垂直にして行うディップスの場合だと、主に上腕三頭筋、大胸筋下部に負荷がかかりますが、

前屈を強めると大胸筋中部の働きが強くなります。

簡単に言えば、体を地面と平行にすれば腕立てと同じ筋肉の使い方になるということです。

 

動作解説

通常のディップスよりも前傾を強めて行う。前傾は脚を後方に反らして行う。

パートナーがいれば、足を持ってもらうのもいい方法。

 

 

 

応用編

 

リバース・シュラッグ

 

僧帽筋下部と広背筋が鍛えられます。ディップスの際、肩甲骨を下げ続けるのが難しい

という人の意識の練習と、その筋群の強化に役立ちます。

 

動作解説

ディップスバーを握り、肘を伸ばした姿勢のまま肩甲骨を

上げ、肩をすくめた姿勢から肩甲骨を下げた姿勢に戻る。

 

 

 

応用編

 

加重ディップス

 

自重が容易になった場合、漸増的に負荷を増やすために、ウエイトを加重して行います。

 

動作解説

加重法として 、ウエイトジャケットを着たりして加重する方法もあるが、腰から専用ベルト、

または柔道の帯を使い、プレートやケトルベルをぶら下げて行うと動作に支障をきたすことなく行える。

できるだけタイトに重りをぶら下げるほうが邪魔にならない。

 

 

 

応用編

 

若木式自動車チューブ運動Ⅰ(チューブを使ったディップス)

 

チューブは伸びるほどに負荷が高まるので、トップの負荷が抜けやすい収縮位置で最も負荷が強くなります。

ボトムでは逆に負荷が軽いので、肩の怪我などのリスクが低いでしょう。

首に少し負担がかかるため、首に故障を抱えている方は注意してください。

 

動作解説

専用または普通のチューブを使い、首の後ろにかける。両手でチューブの端を握り、ディップスを行う。

 

 

 

応用編

 

チューブ+加重

 

前述のように加重とチューブの両方を使ってディップスを行います。

チューブの利点と、チューブの弱点でもある〝ボトムポジションで負荷が軽い″

という問題点を補うために、さらに加重して行います。

 

 

 

 

 

簡易版ディップス

 

1脚の椅子(または2脚)を使って行う。

片方の椅子に肘を伸ばして両手をつき、足をもう片方の椅子、または床に置く。

そこからゆっくり肩関節と肘関節を曲ける。このとき、膝は曲げ伸ばししない。

平行棒を利用したバージョンと比べて三頭筋に負荷が集中する。

負荷の増やし方は、足の高さを上げるか、ももの上にプレートを加重する。

 

 

※負荷が強すぎて行えないという方は腕立て伏せなど、他の運動で筋力をつけましょう。

簡易版ディップスや腕立てがオススメです。設備があれば補助付(アシスト)ディップスもよいでしょう。

またはポジティブをチーティングで行い、ネガティブで強化する方法もあります。

 

 

 

 

 

 

若木式個人徒手體育法(腕立て伏せ)

 

誰もが行ったことのあるトレーニングの代表格とも言える種目だと思います。

この腕立て伏せ、実は初級者だけでなく、やり方によっては上級者にも非常に効果的なトレーニングです。

腕立て伏せを腕や胸だけを鍛える種目だと思っているとしたら、それは間違いです。

それらだけではなく、姿勢維持に足や胴体の筋肉も静的に使われる全身運動です。

問題点としては低回数で行いたいのに、自重では軽すぎて高回数になってしまうため筋肥大が望めないことが挙げられます。

しかし、バリエーション次第で、ベンチプレスに勝るとも劣らない筋肥大、

そしてコーディネーションの向上が見られるでしょう。

特に器具も必要とせず(一部チューブを使用)、手軽に行える腕立て伏せ、その効果と上級者向けの腕立て伏せを上記に紹介します。

 

 

「諸君は一日も早く此の運動法を行へる様になって貰ひたい、そは数ヶ月にして、よく大力を養ふものなり」

 

 

 

若木式一挙二人體育法Ⅰ

加重腕立て伏せ

 

とても負荷の高い種目です。パートナーの体重と自重が負荷としてかかってきます。

バートナーの体重で難易度が変えられます。

大胸筋や上腕三頭筋はもちろん、体幹、そして大腿四頭筋などに強烈に負荷がかかる種目です。

加重によって上体の負荷が増すのはもちろん、プランクという腹筋種目を静的に行っているようなもので

腹筋にかかる負荷も増します。

 

動作解説&注意点

地面に伏せて手を肩幅につき、 パートナーに自分の足方向に向いて上体に乗ってもらう。

パートナーは両肩に手をついてバランスをとり、足を伸ばす。

パートナーの安定を確認したら手で床を強く押して持ち上げ反復する。

臀筋、腹筋を収縮させ、体に一本棒が通っているイメージで。

パートナーの負荷(体重)に負け、腰を折らないようにすること。

 

 

 

片手腕立て伏せ

 

今回紹介する片手腕立ては一般的に知られている足を開いて行うイージーなものではなく、

足を閉じ揃えて行うハードなものです。パートナーがいなくても器具がなくても、寝るスペースさえあれば行えます。

唯一の問題点は行うのにかなりの筋力を必要とすることです。

できる運動から始めて、この運動を取り入れられるようになりましょう。

 

動作解説

腕立て伏せの姿勢から右手を内側に向け、左手を左太ももに置く。

体全体をやや左にひねる。右足はつま先、左足はつま先を外側に開き足裏を地面につける。

右肘関節を屈曲させ地面ぎりぎりになるまで体を下ろし、体に力を入れたまま右肘関節を伸展させる。

これを反復(力が足りず体が挙がらない人は、押し挙げる際に体を曲げてもよい)。

 

 

腕立て伏せ注意点

顔を上げると首に負担がかかるので、顔は下を向くこと。

肩甲骨を寄せ胸を張る。胴体をかため、腰を支点に行わないこと。

 

 

 

 

 

寝ざし

 

一見地面に寝て行う可動域の狭いベンチプレスのようですが、行ってみると難易度の高さを認識するでしょう。

初めてやってみると、ベンチプレスで扱う重量より軽い重量しか扱えないと思います。

可動域が狭いのになぜか? これは普段使われていないバランス能力、

スタビライゼーションが強化されていないためです。

寝ざしをやりこむとベンチプレスの重量も伸びます。

ベンチプレスの重量が停滞している方にオススメです(若木は体重65キ口にして、

この寝ざしを212・3キロ挙げたそうです。当時の世界記録164・9キ口)。

 

動作解説

頭上にバーベルを置き、床に寝る。寝た姿勢からバーベルを握りプルオーバーの要領で胸の上まで持っていく

(ラックの場合は最初から胸の位置に設置してもよい。またはパートナーにスタートポジションまで補助してもらうと

やりやすい)。両肘が地面についた位置からバーベルを両肘が伸びる位置まで押し上げる。

このとき、背中を地面に押し付け、肩甲骨は寄せ、全身を緊張させる。

 

 

 

 

 

若木式一挙二人體育法Ⅲ

 

ユニークな発想のトレーニングで二人同時に鍛えられる運動です。

パートナーは脱力せず、体に棒が一本通っているようなイメージで全身を静的収縮させましょう。

 

動作解説

左膝を立て右膝を折り曲げてしゃがみ、左腕を左膝の上に置く。

右肘をわき腹につけパートナーの頸部を支える。パートナーは体を剛体にする。

体を左に少し捻りながら右腕を伸ばす。これを反復。

 

 

 

参考文献/『フルコンタクトKARATE  2005.1月号』 福昌堂

『復刻版 怪力法並に肉体改造体力増進法』

著・若木竹丸 (株)体育とスボーツ出版社

協力/川端勇人

 

 

 

鉄愛コラム

 

ディップス愛。現在の記録は130キロ加重で5回です。

平行な棒を見るとディップスしたくなります。犬の散歩で公園行くとディップス。

エスカレーターでもついディップス。またサイクル組んで記録を伸ばしたいですね。

トレーニング関係の取材はあるのに、未だに格闘技の取材はありません。大丈夫かな俺。

しかも私指定ではなく「筋肉がある暇な人」で、私。なんて扱いでしょう。

あと武器屋の木刀のモデルもやりました。思春期の頃から木刀大好きで20本くらい所持していましたが、

将来を悲観したらしい母に全部捨てられました。

モデルのギャラは現物支給でお願いして高価な木刀いただきましたよ。今度は捨てられないように大事にしましょう。

 

 

 

 

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