【コラム】鍛えた筋肉、使ってみませんか?

先日はリング上にて日々トレーニングした筋肉をお披露目すべくコンテスト…じゃなかった、格闘技の試合で使える筋肉を見せつけてきました。山田崇太郎です。格闘技って面白いです。PLAYするのはもちろん観戦するのも楽しい。トレーニングにどっぷり浸かる前に憧れたカラダって、スクリーンの中のブルース・リーや、テレビの中のK-1選手でした。今は鈴木雅選手ですが(キッパリ)。そんなトレー二ー視点で格闘技の試合を楽しむコツというか、ものの見方の1つとして、山田からの提案です。

 

 

トレーニーの視点で格闘技の試合を楽しむコツといいますか、ものの見方の1つとして、躍動する筋肉を楽しむってのはどうでしょう?静止したポージングも悪くないですが、動きのなかで際立つ筋肉、いいと思います。ストレートパンチの上腕三頭筋のカット、広背筋、ミドルキックの大腿四頭筋に浮かび上がるティアドロップなど、見どころ満載です。意識しなくても、インパクトや動作の切り替えしのタイミングでいい感じに収縮するのでカットが出ます。

今回、山田も試合でアキレス腱固めに手応えを感じたので、カメラを意識してハムストリングのカットを出してみました。前述とは矛盾するようですが、サイドトライセプスでカーフを出し忘れないようなものですね。ちなみに、そこで試合が終らず微妙に消耗したのはここだけの秘密。ポージングって思ったよりハードです。

さあ、その瞬間しか目にすることのできない一期一会の筋肉を見逃さないよう、会場へGO! …というと、「ほかのスポーツでもいいじゃん」とツッコミが入りそうですね。でも上半身裸で、絞れていて、かつ筋量豊富なスポーツって少ないでしょ!レッツ格闘技観戦!

そんなわけで(どんなわけだ)、ちょっと強引ですが今回は試合に向けた調整について語ります。

格闘技の試合に向けてやることは、大きく分けると「体重調整」「強くなる」「対戦相手対策」の3つです。

 

 

減量も持久力向上も筋トレで

最初に体重調整。階級制で行われるため、選択した階級に合わせて体重を調整します。基本はデカいほうが強いです(絞れているのは前提として)。筋肉と同じです。軽量は試合の前日です。試合まで約24時間あるわけですが、ここ、かなり重要です。

階級に応じて増量したり減量したりしていくわけですが、ここでは減量について説明していきましょう。減量には2段階あって、まずは体脂肪を落としていくダイエット。そし て直前にウォーターカット。この2ステップです。

減量と聞くと、食事を減らしてダラダラ有酸素…というイメージではないでしょうか?そういう方法を取り入れる選手も多いのですが、私は格闘家の減量に有酸素は不要だと考えています。有酸素だと脂肪は落ちるものの、筋肉も落ちるというデメリットがあり、減量に必須ではありません。

また、減量やダイエットに食事制限は必須ですが、あくまで対人競技なので、体組成の改善だけでなく、しっかり動けるエネルギーを摂取する必要があります。計量をパスするのは必須として、その後の試合が本番。試合で勝つために必要な練習が大事なのです。

こうしてみると、格闘技ってやることがたくさんあります。有酸素で強くなれるのかというと、持久力の向上という視点では、格闘技の試合中には心拍数がかなり上がります。それ以上やらなければ、持久力の向上目的としては効果が低い。局所的な筋持久力の向上を図るならハイレップのトレーニングが適していますし、技術練習の時間のなかで力の抜きどころを覚えたほうが実践的といえます。

じゃあ、何をして体重を落とすのか?はい、トレーニーの皆さんも大好きな筋トレです。脂肪が落ちるし、筋肉は落ちにくくなります。アンチカタボリック効果が大きいのですね。これが食事制限だけで筋肉に負荷をかけていないと、筋肉はみるみる削れていきます。カロリー制限下なので筋量の伸びは期待できないでしょうが、筋トレで維持はしておきましょう。その際、強度は落とさずに!神経の促通や、種目そのものがうまくなる――っていうのは置いといて、減量で扱う重量が落ちなければGOODです。

格闘技のようなコンタクトスポーツでは、筋力はもちろんですが、傷害予防の上でもウェイトトレーニングが大事。ケガをしたらパフォーマンスは低下し、練習にも支障を来します。健康は大事な要素。スポーツは競技レベルになれば健康的ではないですが(そもそもお互い殴り合ったり関節を極めたりする競技が健康にいいわけはないですね)、パフォーマンスを発揮するために健康は必要なのです。

ハイインテンシティインターバルトレーニング(HIIT)もオススメです。格闘技での持久力は一定のペースで行うものでなく、爆発的に動いてちょっと休んでの繰り返しですから、高強度のインターバルトレーニングが適しています。この方法だと競技力の低下を招くことがなく、むしろ向上します。

最後の最後や、「あと10キロは落とさないと計量クリアできない!」となったらカタボる覚悟で、ハムスターの回り車よろしく延々とエアロバイクを遭ぎ、有酸素で消費カロリーを稼ぐしかありません。そういうことにならないよう、普段からある程度の節制はしておくべきでしょう。昔のボディビルダーみたいに、オンとオフの体重差が20キロもあるのはNG。年数回の頻度で試合があるわけですから。

じゃあ常にリミットでいればいいじゃん――はい。それも1つの方法ですが、ほぼすべての選手が減量して試合に臨みます。それはなぜか?計量時の体重で試合をするわけでは ないからです。計量の瞬間だけその体重になればいいんです。サウナにでも入れば、一時的に2~3キ口落ちますよね?水を飲んだら元通りですが。でも、サウナ後のタイミングで計量に望めば、下の階級で戦えるというわけです。

体格で相手を上回っていると有利です。ただ、体組成がいいだけではダメ。リーチや作戦もありますからね。階級も落とせばいいというものではなく、パフォーマンスが発揮できる適正階級があります。最近のMMA(総合格闘技)はみんな下げる傾向。93キロの選手が70キロ級で試合することもあります。

 

 

1日で戻すための策=ウォーターカット

長くなりましたが、体組成をクリアしたら、お次はウォーターカット。試合前のひと仕事です。ここまではトレーニーの皆さんも取り入れることのできる、いわゆる「ダイエット」。ここから先は競技者向けの「減量」になります。実際に使う人は限られるかと思いますが、雑学程度にお読みくださいませ。

前述の通り、試合前日の計量をクリアすれば、本番までに体重が増えても関係ありません(最近は、当日に再計量する団体もあります)。そのため、少しでも試合で優位に立つために水分で一時的に体重を落とし、試合までに体重を戻して本番に臨みます。計量時より4~18キロ重くなっているケースもあります。階級制って、公平性って何だろうと考えさせられます。

脱水の症状として、体重の2%の水分が失われると競技力の低下が始まり、3~4%で強い倦怠感や目に見える競技力の低下、5%を超えるとめまいや吐き気など健康へのリスクが生じます。危険です。

私は通常83キロで、そこから6キロを水分で落とすため、約8%の水分を落とすことになります。水分が抜けている時間は、できるだけ短時間のほうがカラダの負担も軽く済む ので準備はしますが、24時間以内、できれば数時間で水を抜くようにします。筋肉は水分の割合が大きいので、筋肉量が豊富なほうが水が抜ける幅は大きくなります。

水抜きを開始するにあたって、電解質のバランスや体内のグリコーゲンを調整して水はけをよくしておきます。ラーメンのような味の濃いものを食べた翌日にむくんで体重が増 えるときの〝逆〟を行うわけです。命に関わることなので、細かい方法は医師の管理の下などで安全に配慮して行ってください。

落とす方法としてはサウナに入ったり、半身浴をしたり、厚着をして走ったりして汗をかきます。はい、いわゆる間違ったダイエットですね(笑)。そんなこんなで最後はフラフラになりつつも頑張って水を抜くのですが、その体重でいるのも一瞬だけ。ふと、自分は何をやっているんだろうと思うこともあります。いや、好きでやってるんですけどね。自己満足です。

人生って数字に捉われていますよね。ベンチプレスの重量や順位、年収、身長・体重に年齢。数字に一喜一憂するなんて…と、脱水症状になると思考力が低下するからか、試合前で情緒不安定になるからか、発言がメンヘラっぽくなる傾向があります。

普段不遜な態度の選手が急に周囲に感謝したり。これ、格闘家あるあるの1つ。

 

 

筋トレを実戦に生かせ!

次に「強くなる」方法。格闘技の技術は置いておき、競技力向上に用いる補強について語ります。

補強で大切なのは、競技以上の負荷をかけること。競技と同レベルの負荷なら競技練習をしていればいいわけですからね。筋力だったりアジリティだったり、自分に足りない要素を見極めて改善していきます。

ただ、補強の落とし穴もあります。しっかり競技につなげることが大事なのですが、トレーニングのためのトレーニングになっているケースは多いです。敏捷性を向上させるためにラダーを取り入れたのに、ラダーばかり上手になって肝心の敏捷性が向上していないとか、トレーニングの重量にこだわってフォームを崩してしまい、競技でのパフォーマンスに結びつかないとか…。

筋肥大を目的としたいわゆる効かせるトレーニングの弊害として、〝効かせ癖〟という問題が生じるケースがよくあります。筋トレの魅力に取りつかれて、実技練習やらそのほかの練習やらをおろそかにする、というのもあると思いますが。

効かせ癖とは、単一の筋肉にピンポイントで効かせる癖がついて連動性が失われたり、ノンロックトレーニングの癖がついて筋肉をずっと緊張させっばなしだったり、実技練習でもパンプアップしちゃう、お得な癖。

力感と相手に伝わる力は別物です。パンチも腕に力を入れた〝手打ち〟でなく、下肢からしっかり連動させて胸椎の回旋を出して打つほうが相手に伝わる力は大きいです。肥大させた筋肉を上手に生かすため、ストレッチショートニングサイクル(SSC)を利用したトレーニングなどで上手なカラダの使い方を身につけるといいでしょう。

そして実技練習。あくまでも補強は補強です。実技練習で足りない部分をピンポイントで補うものなので、取り組む比重の違いはあれ、実技練習が重要なことは間違いありません。

そして最後に「対戦相手対策」です。これまでは強くなる方法でしたが、これはしっかり強さを発揮する方法、とでもいいましょうか。対人競技なので、自身のパフォーマンスを発揮するのはもちろん、相手のパフォーマンスを出させないことで相対的に優位に立てます。技術的なことになるので省きますが、相手の得意分野では勝負せず苦手なところを攻める、などです。対策の選択肢を広げるためにも、普段から強くなる練習で地力を上げておくことは大切です。

トレーニーの皆さん、せっかく鍛えた筋肉、使ってみませんか?

<写真の説明>

2月22日に行われた「ZST.44」で、セミファイナルに登場した崇太郎氏。1Rわずか1分39秒で勝利し、ウェルター級王座に挑戦することが決定した

 

 

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