【コラム】アスリートの減量 前編

アスリートの減量と聞いて、皆さんが連想するのは、『あしたのジョー』ではないでしょうか?しかしながら、あの減量法は間違っています。簡単に説明すると、『あしたのジョー』式減量法とは、長期間に渡って食事制限と水断ちを重ねていくというもの…。

というわけで、今回と次回の2号にわたって、アスリートの減量について、いつも以上に真面目に考えてみたいと思います。

 

本末転倒な減量法

例えば、今日サウナや運動で2キロ汗をかくとします。これで2キロ減ですね。その後、水分や食事を1キロ分補給して就寝するとして、一日で差し引きマイナス1キロとなります。これを翌日も同様に続けていくと10日で10キロの減量となります。

一見、帳尻は合っているようですが、落とし穴があります。

まず、慢性的な栄養失調になります。外から栄養を摂らなければ、不足分を体脂肪から補ってくれそうなものですが、そう上手くはいきません。

餓死者の体脂肪率が意外と高い…そんな話を耳にしたことはありませんか?体脂肪を使い切るまで延命できそうなものですが、そう簡単な話ではないようです。

カラダは、この栄養が入ってこない状態を飢餓状態と考えて、脂肪が燃えにくい状態になってしまいます。

人類の長い歴史の中で絶えず飢えにさらされてきた経験から、飢えに備えて体脂肪を溜め込む機能が遺伝子にプログラムされているのですね。そして、飢えだと察したカラダは大事な体脂肪を節約しようと、燃費の悪い筋肉を優先的にエネルギー源として使うことで代謝を落として飢餓を乗り越えようとします。

結果、体重は落ちても、我々トレーニーが日々丹精こめて作り上げてきた愛しの筋肉が失われてしまいます。

体脂肪を落としてバキバキのナイスボディに仕上げるつもりが、残ったのは体脂肪ばかりでわがままボディになってしまった…なんて、本末転倒な結末が待っています。

 

水断ちの危険性

次に、水分を制限する水断ちですが、カラダは体重に対して1%の水分が失われると喉の乾きや運動能力の低下が、3%失われると機能障害が起こります。機能障害が起こると代謝の低下、同時に水分不足によりド口ド口血液になり、心不全のリスクが高まります。

体脂肪を落とすつもりが命を落とす、なんてことにもなりかねません。

そして水断ちを続けていくと、日に日に体重が落ちなくなってきます。前述の体脂肪同様、カラダが防衛本能を働かせるんですね。「これ以上水分を出すな!」と。

こうなると、減量で必死になって水分を出そうとしても落ちません。そりゃ、カラダも命がかかってますから必死です。

実は一般の方のダイエットは、これと同様のことを行っています。

大抵の方が『あしたのジョー』方式なんですね。サウナで汗を流して「体重が落ちた!」と。

食べたものの嵩(かさ)や飲んだ水分量、排便があったかどうかで体重なんて増減するのに、毎日体重計に乗って一喜一憂。

ここから「私は水を飲んでも太るんだ」なんて勘違いも生まれます。〝ファスティング〟という名の断食。内臓を休ませるという目的ならいいのですが、3キロも落ちた!と喜ぶ方。そりゃ食事を1~2食抜けばカラダから老廃物や水分が抜けて体重は落ちるでしょう。でも減っているのは脂肪ではないのです。そして当たり前のようにリバウンド。カラダにとっていいことはありません。

 

アスリートの減量テク <基本編>

さて前置きが長くなりましたが、現在のアスリートが実際に行っている減量法とはどんなものか、紹介していきたいと思います。

まず、アスリートの減量と皆さんのダイエットは違います(ちなみにダイエットは英語のDietの音訳で、本来の意味としては「食餌療法」など食事に関することですが、日本では広い意味で運動療法なども含む痩身というニュアンスで使われることが多いですね)。

アスリートが減量する目的として、

・カラダにとって重りとなる体脂肪を減らしてパフォーマンス向上

・階級制の競技で計量をパスするために

・フィギュア競技のように美的要素も審査対象となるため

など、さまざまです。

そして、その方法としてアスリー トの減量も2通り、というか2段階 になっています。 第1段階では体脂肪のコントロールを行います。これはアスリートならずとも誰にでも

取り入れられるものです。

筋肉を落とすのは、基本避けたい行為です。カラダを動かす動力となるのは筋肉。パフォーマンス発揮のために、筋肉はトレーニー同様、アスリートにも大事なものです。

そのため、まず脂肪がある場合はカロリー計算をして低カ口リー高タンパク質の食事をして脂肪を落とします。

ですが、ただ脂肪を落とせばいいというわけではないのがアスリートの辛いところです。 例えば、今流行の低炭水化物ダイエット。炭水化物を減らして、糖分の変わりに脂肪をエ

ネルギー源とするものです。

この方法は脂肪を燃やすという点では効果が高いのですが、アスリートには不向きです。筋トレをして、体脂肪を落とす作業だけならば低炭水化物でも可能でしょう。

あくまでアスリートの目的は試合でパフォーマンスを発揮すること。クオリティの高い技術練習を行うためには、カラダのガソリンとなる炭水化物が必要です。脂肪を燃やすことに精一杯になって、実技練習が疎かになってはこれも本末転倒になってしまいます。

読者の皆さんも、ダイエットが本業に影響しては困りものです。

頭が回らない、疲れがひどい、といった場合はしっかり炭水化物など栄養を摂りながら無理なくダイエットに励みましょう。

デスクワークで脳を動かすのは糖分、カラダを動かす仕事でももちろん糖分は大事です。 そして、有酸素運動を取り入れることで消費カロリーを増やします。

減量の簡単な公式として「摂取カロリー<消費カロリー」となれば体重は落ちます。

だったら有酸素の量や強度を上げれば、消費カロリーも増加してもっと効果も高まるのでは?と安易に有酸素に走る行為もこれまたNGです。やり過ぎれば、疲労が蓄積し実技練習に支障が出てしまいます。

必要な栄養素は確保しつつ、余分な栄養素はカット、水分はしっかり摂る。

食事制限+有酸素運動で上手に筋量を維持しながら体脂肪コントロールをしましょう。

階級にもよるのですが、体脂肪率を5~10%まで落とすようにしていきます。

ただ、バキバキに仕上がったからといって勝てるわけではありません。

体重それ自体も大きな武器となるコンタクトスポーツなどでは、重さも重要なファクターです。そのため階級を改めて設定するか、筋量を増やす必要があれば基本、オフシーズンにトレーニングをして除脂肪体重を伸ばすようにします。

今回は、ここまで。第2段階はアスリートならではの、減量テクニックについて解説します。

 

ただ脂肪を落とせばいいというわけではないのが、アスリートの辛いところ…

 

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